事業承継と相続は密接に関連しています。事業承継とは、会社や家業を次世代に引き継ぐプロセスを指し、その中で経営権や財産の移転が伴うため、相続の問題が避けられません。
円滑な事業承継を実現するには、相続の観点を踏まえた計画と対策が不可欠です。
以下では、事業承継と相続の関係を解説し、それぞれのポイントや注意点、スムーズに進めるための方法を紹介します。
このページの目次
1. 事業承継における相続の役割
事業承継では、次のような相続に関する要素が重要な役割を果たします。
(1) 株式や経営権の移転
- 事業を引き継ぐ際、多くの中小企業では現経営者が会社の大部分の株式を保有しています。
- この株式の相続が、経営権の承継に直結するため、誰がどの割合で相続するかが経営の安定性を左右します。
(2) 事業用資産の移転
- 不動産(工場や事務所)、設備、車両などの事業用資産も相続の対象です。
- 相続時には、評価額に基づいて相続税が課されるため、税務面での計画が重要です。
(3) 遺留分への配慮
- 相続では、一定の財産を受け取る権利(遺留分)が法定相続人に保証されています。
- 後継者に多くの財産を遺す場合、他の相続人の遺留分侵害が発生し、トラブルに発展するリスクがあります。
(4) 法定相続人の調整
- 複数の法定相続人がいる場合、遺産分割の話し合いが必要です。
- この際、事業を承継する後継者のために他の相続人を納得させる調整が不可欠です。
2. 事業承継と相続の違い
項目 | 事業承継 | 相続 |
目的 | 会社や事業を次世代に引き継ぐこと。 | 個人が残した財産を法定相続人間で分けること。 |
対象 | 株式、事業用資産、経営ノウハウ、人脈など | 不動産、現金、預貯金、株式などの財産全般。 |
進行方法 | 生前の計画(贈与や信託)、遺言書などで段階的に進める。 | 死亡後に法定相続人が遺産分割協議を行うことで決まる。 |
税務の負担 | 株式や資産の贈与税・相続税が課される。 | 相続税が課される。 |
事業承継は、相続を含む形で進める必要があり、生前からの計画的な準備がカギとなります。
3. 事業承継における相続の課題
(1) 株式や財産の分散
- 法定相続人間で株式が分散すると、後継者の経営権が不安定になります。
- たとえば、後継者が過半数の株式を持てない場合、経営の意思決定がスムーズに進まない可能性があります。
(2) 相続税の負担
- 株式や事業用資産は相続時に評価額が算定され、その金額に基づいて相続税が課されます。
- 評価額が高額になると、後継者や相続人にとって大きな経済的負担となります。
(3) 遺留分請求
- 他の相続人が遺留分を請求することで、後継者が経営権や事業用資産を十分に引き継げなくなるリスクがあります。
(4) 感情的な対立
- 親族間での遺産分割に関する争いが、事業承継の進行を妨げることがあります。
- 特に、後継者以外の相続人が不満を抱く場合、円滑な承継が困難になります。
4. 円滑な事業承継を進めるためのポイント
(1) 生前から計画的に進める
- 生前贈与: 株式や事業用資産を少しずつ後継者に移転し、贈与税負担を分散します。
- 家族信託: 財産管理や運用を信頼できる家族に委託し、相続時のトラブルを防ぎます。
(2) 遺言書の活用
- 遺言書を作成し、後継者に事業用資産や株式を引き継ぐ内容を明確に記載します。
- 他の相続人への配慮(現金や生命保険金の遺贈)を行うことで、遺留分請求を防止します。
(3) 事業承継税制の利用
- 事業承継税制を活用することで、相続税や贈与税を猶予または免除できます。
- 適用要件を満たすため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
(4) 関係者間の調整
- 相続人間でのトラブルを防ぐため、全員が納得する形で遺産分割協議を進めます。
- 弁護士や税理士などの専門家を仲介役とすることで、感情的な対立を避けられます。
(5) 後継者の育成
- 経営ノウハウや業務を後継者に伝えるため、計画的に育成を進めます。
- 取引先や従業員との信頼関係を構築させることも重要です。
5. 弁護士の役割
事業承継における相続問題は、法的・税務的な複雑さを伴います。弁護士がサポートすることで、以下のメリットがあります。
【1】法的トラブルの防止
- 遺言書や信託契約の作成を通じて、後継者と相続人間の争いを防ぎます。
【2】税務対策の提案
- 税理士と連携し、事業承継税制や節税策を最大限に活用します。
【3】相続人間の調整
- 遺産分割協議を円滑に進め、全員が納得できる形で調整を行います。
【4】法務手続きの代行
- 名義変更や株式移転、登記手続きを一括で代行し、スムーズに承継を進めます。
6. まとめ
事業承継と相続は切り離せない関係にあり、相続の課題を解決することが円滑な事業承継のカギとなります。適切な計画と対策を講じることで、後継者へのスムーズな引き継ぎと親族間のトラブル防止が可能です。
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