家族信託は、事業承継の手段として近年注目されています。
従来の遺言書や贈与などの方法と異なり、柔軟で長期的な資産管理が可能です。特に、認知症リスクの回避や事業資産の管理を効率化したい場合に有効です。
以下では、家族信託による事業承継の仕組みやメリット、活用例、注意点について解説します。
このページの目次
1. 家族信託とは?
家族信託とは、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・運用を託し、受益者(財産から利益を受ける人)がその利益を受け取る仕組みです。
委託者(財産を託す人)が存命中も、自分の意思を反映した財産管理が可能であり、認知症などで意思判断能力を失った場合も柔軟な対応ができます。
2. 家族信託を事業承継に活用するメリット
(1) 認知症リスクへの備え
経営者が認知症になると、事業資産や株式が凍結され、事業の運営に支障が出る可能性があります。
家族信託では、事前に財産管理を家族に託すことで、経営をスムーズに引き継げます。
(2) 遺言書に代わる柔軟な財産承継
遺言書は本人の死亡後に効力を発揮しますが、家族信託では、委託者が存命中から財産の管理・運用を開始できます。
これにより、事業承継を計画的に進めることが可能です。
(3) 複数の受益者を設定できる
信託では、複数の受益者を設定できるため、相続人間での公平な分配が可能です。
例えば、後継者が事業を相続し、他の相続人には利益分配を設定することもできます。
(4) 財産分散を防ぐ
事業用資産や会社株式を後継者に集中させることで、経営権の分散を防ぎます。
(5) 相続トラブルの回避
事業用資産や株式について、信託契約で受益者を指定することで、相続人間の争いを未然に防ぎます。
3. 家族信託の仕組みと流れ
家族信託を活用して事業承継を行う場合の基本的な仕組みと流れを説明します。
(1) 登場人物
委託者 | 現経営者(財産を託す人) |
受託者 | 家族内の信頼できる人物(例: 後継者) |
受益者 | 財産の利益を受け取る人(通常は委託者や後継者) |
(2) 信託契約の締結
委託者と受託者の間で、事業用資産(株式、不動産など)の管理・運用方法を定めた信託契約を締結します。
契約書には、具体的な資産の内容や管理方法、信託期間などを記載します。
(3) 財産の移管
信託契約に基づき、事業用資産を受託者に移管します。
ただし、受託者が財産を自由に処分することはできず、信託契約に従って管理・運用します。
(4) 利益分配の開始
受託者が事業を運営し、得られた利益を受益者(後継者や家族)に分配します。
(5) 最終的な財産の帰属
信託期間終了後、財産はあらかじめ指定された者(例: 後継者)に帰属します。
4. 家族信託を活用した事業承継の具体例
【例1】後継者に経営権を集中させる
現経営者が保有する会社株式を信託し、後継者(受託者)に経営権を委ねます。
信託契約で、株式の運用方法や利益分配方法を明確に定めることで、スムーズな承継が可能です。
【例2】事業用不動産の管理を委託
工場や店舗などの事業用不動産を信託し、後継者に管理・運用を任せます。
将来的には後継者が不動産を正式に相続する形で承継します。
【例3】非後継者への利益分配
後継者が事業資産を引き継ぐ一方、他の相続人には信託契約に基づいて利益分配を行い、公平性を保ちます。
5. 家族信託を活用する際の注意点
(1) 信託契約の内容を明確にする
- 信託契約に曖昧な点があると、後継者や相続人間でトラブルが発生する可能性があります。契約内容を明確に定めることが重要です。
(2) 受託者の責任と負担
- 受託者には管理・運用の義務が生じます。受託者が責任を全うできるよう、事前に役割を理解してもらうことが必要です。
(3) 税務上の影響を確認する
- 信託契約による財産移管が課税対象となる場合があるため、税理士と連携して税務リスクを確認します。
(4) 長期的な計画を立てる
- 信託期間や最終的な財産帰属先を見据えた計画が必要です。
6. 家族信託の手続きと費用
(1) 手続きの流れ
- 現状の把握と計画立案(弁護士や税理士と相談)
- 信託契約書の作成
- 財産の移管手続き(不動産登記、株式名義変更など)
(2) 費用の目安
- 信託契約書の作成費用: 10万円〜50万円
- 不動産登記や株式名義変更手続きの費用: 5万円〜20万円(内容により異なる)
7. 当事務所が提供するサポート内容
当事務所では、家族信託を活用した事業承継について以下のサポートを提供しています:
- 信託契約書の作成: 法的に有効でトラブルを防ぐ契約書を作成します。
- 税務リスクの検討: 税理士と連携し、最適な税務対策を提案します。
- 受託者のサポート: 受託者の役割や義務について丁寧に説明します。
- 長期的な計画の策定: 信託期間や財産分配方法を明確に計画します。
8. まとめ
家族信託は、柔軟で効率的な事業承継を実現する手段です。早めに計画を立て、専門家のサポートを受けることで、後継者へのスムーズな引き継ぎとトラブルの回避が可能になります。
「事業承継を計画している」「家族信託を活用したい」とお考えの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
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